カレーライスと日本人

2章 インドへの旅

最初の思いつきは、日本のルーでカレーを作ってインド人に食べさせて感想を聞いてみようということだった。ルーはギャグで「印度カリー」を使用。結果、予想に反し「おいしいカレーだ」と言われた。それどころか、「うちも日本のカレールーを使ってるよ」と戸棚から出して見せられた。

しかし一番の驚きは、インド人がカレーという言葉を使ったこと。なぜなら、インドにカレーという料理が無いとされているからだ。その理由をあるインド人は次のように説明した。インドには15個の公用語があり、数十の民族が住んでいて、彼らの間でも何がカレーかという一致した定義はない。だから「真のカレーの定義」など存在しないのだ。

共通見解がないなら主観でと考え、特定の人にカレーを作ってと頼んで、その様子を観察した。まず彼女は玉ねぎをミキサーにかけ、スパイス20種類をすり鉢で砕いていた。1種類につき1瓶ほどの量を、水を加えてペースト状にしてすりつぶす。これが日本のカレーには無い香りの源だった。

毎日カレーを食べ続け、結局、日本のカレーに似たものは無かった。

カレー周辺ではチャパティやバスマティライスも違うが、インドには揚げ物が多い。これは、火を通せば通すほど宗教的浄性が増すという考え方による。またチャツネはカレーの材料ではなく、味変化のグラデーションを食べている途中につけるための道具であった。

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d.b