消費の自由も生産の自由も私有財産制が支えている。これは、共産主義者のマックスイーストマンでさえ認めていることだ。生産が自由だからこそ、職業選択や起業が自由で、貧民にものし上がるチャンスがあるし、逆に何らかの天災的な不幸で失職した場合にも、友達の会社に雇用してもらうことが可能なのだ。

計画経済下でも不幸は起こる。しかし計画経済下では不幸は人災であることが分かっているので天災よりも一層耐えがたい。例えば、計画経済により個人の職業と地位が決められて給与が下がる場合、給与が下がった人間が転職によって給料を上げる自由は無いのだ。

計画経済により強制された職業と給与に不満が生じるならば、それは公平な決定なのだろうか？計画経済が解こうとしているのは、富の分配の最適化問題である。計画経済はこの問題に解を与えない。金持ちから金を取り上げるのは簡単だが、実は公平に分配する方法はそもそも無いからだ。

まず分配すべき元手の価値は、個人主義の下では競争により価格が決まる。しかし、計画経済の下では、生産量を少なく計画すれば価値は高騰し、その逆も成り立つ。そしてその計画を成立させるために、消費が同時に統制される。財Aと財Bの公平価格は存在せず、単に計画経済の方針次第で変動する。それは誰が何を生産し、誰が何を消費するかである。ゆえに公平な交換自体が存在しない。

だから給与も地位も待遇も不公平であり、計画経済下では人災を不満に思う層が増大する。

例外は全生産品の均一な平等分配である。しかし、実は計画経済は「完全な平等」を目指していないのだ。計画経済が目指すのは「自由競争よりも公平な分配」であり、要はそれは委員会による恣意的な分配だ。

それは最初こそ貧困階級の意見と一致するが、どんどんずれて、最終的には貧困階級の恨みが計画経済に向くようになる。その理由は、「新社会主義」が、貴族制と化した旧社会主義打倒というイデオロギーを樹立し成功をおさめたためだった。

その新社会主義こそ、ドイツやイタリアのファシズムであった。

自由を放棄することで国から保障をもらおうとする人々。そして最悪の人物が支配者となる。